最近、トランス脂肪酸による健康への悪影響が注目されています。いったいトランス脂肪酸とは何なのでしょうか。
「あぶら」には常温で液体の油と固体の脂とがあります。これらをまとめて油脂(ゆし)といいます。油脂は脂肪酸とグリセリンという分子からできています。
脂肪酸にはたくさんの種類がありますが、炭素の二重結合がない飽和脂肪酸と炭素の二重結合がある不飽和脂肪酸とに分けられます。この不飽和脂肪酸の二重結合は、シス型とトランス型とに分けられます。トランス型の二重結合がある不飽和脂肪酸のことをトランス脂肪酸といいます。
常温で液体の植物油から固体の脂を製造する加工技術である「水素添加」によって、トランス脂肪酸が生成することが知られています。水素添加によって製造される食品には、マーガリンやショートニングがあり、それらを原材料としたパン、ケーキ、ドーナツなどにはトランス脂肪酸が含まれています。
トランス脂肪酸は食品から取る必要はないと考えられており、取り過ぎた場合の健康への悪影響が注目されています。トランス脂肪酸を取る量が多いと、血液中のLDLコレステロール(悪玉コレステロール)が増え、HDLコレステロール(善玉コレステロール)が減ってしまうため、心臓病(冠動脈疾患)の危険度を高めることが示されています。
WHO(世界保健機関)はトランス脂肪酸の摂取量を総エネルギー摂取量の1%未満とするよう勧告しています。平均的な活動量の日本人では、1日あたり約2g未満という計算になります。現在、日本人のトランス脂肪酸の平均摂取量は、総エネルギー摂取量の0.5%未満(1日あたり約1g未満)になっているとされています。トランス脂肪酸の摂取量の多いアメリカでは、FDA(米国食品医薬品庁)が部分水素添加油脂を規制する決定をしています。一般に安全と認められ食品添加物としての使用が許可なく可能となるGRAS(Generally Recognized as Safe)の対象から除外したのです。日本ではこのような規制は出されていませんが、食事から取る脂質の量が多い人は、トランス脂肪酸の摂取量も多くなることが報告されているため、注意が必要です。