脂質異常の生活指導(吹田スコアと運動療法)
心筋梗塞の発症の可能性を図る点数表
LDLコレステロール(悪玉コレステロール)や中性脂肪が高く、HDLコレステロール(善玉コレステロール)が低いと動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳卒中の危険度が高くなることが分かっています。
全く病気はないけれど、健康診断でLDLコレステロールが高いと指摘された場合、お薬を開始するか否か判断に迷うと思います。
そんなとき、ぜひ参考にしたい指標があります。
吹田スコアといって、簡単に言うと心筋梗塞をどのくらい起こしやすいかを見る点数表です。
冠動脈疾患発症予測モデルと呼ばれ、狭心症や心筋梗塞などの冠動脈疾患に強い影響のある脂質異常かどうかを判断し、冠動脈疾患がどの程度起こるか日本人のデータをもとに調べることができます。
年齢、性別、喫煙の有無、血圧、HDLコレステロール値、LDLコレステロール値、耐糖能異常の有無、家族歴の有無などをもとに計算します。
日本動脈硬化学会から「これりすくん」という名前で一般の方向けのアプリが使用できるようになっているので参考にしてみてください。
また、脈波検査や頚動脈エコー検査などで動脈硬化の進行具合をチェックすることも1つの判断材料になると思います。
これらの検査ですでに動脈硬化の進行が認められれば、お薬開始も選択肢でしょう。
LDLコレステロールや中性脂肪を下げるお薬は複数存在しますが、HDLコレステロールを上げるにはどうしたら良いかというご質問を多くいただきます。
HDLコレステロールの上昇に効果があるとされているのは、有酸素運動と体重減量です。
仕事は車通勤、デスクワークが中心という方は運動不足になりがちです。
実は、座っている時間が長いと死亡リスクが高くなるという研究結果があるのです。
幸いなことに、この研究では、座り仕事が多くても、しっかり運動をすれば死亡リスクが相殺されることが示されています。
運動を行う際は、運動強度に注目する必要があります
ゆっくり歩く程度の運動は、あまり効果がありません。安静時を1とした場合と比較して何倍のエネルギーを消費するかという運動強度の指標をメッツ(METs)といいます。
例えば、歩く・掃除機をかける・洗車をするなどは3.0~3.5メッツ程度、速足で歩く・カートを使わないゴルフのラウンドなどは4.0~4.5メッツ程度、ゆっくりとしたジョギングが6メッツ、エアロビクスは6.5~7.0メッツ程度、ランニング・クロールで泳ぐなどは8.0メッツといった具合です。
1日の座り姿勢が8時間以上の人は、運動量が週35.5メッツ・時を超えれば死亡リスクを相殺できるとされています(例:6.0メッツのジョギングを週6時間行うなど)。
ただし、運動は膝や腰などのケガを伴う可能性があるため、弱い強度から徐々に始めるのが原則です。
*心臓病などの持病がある人は、運動の制限が必要な場合があります。また、変形性膝関節症や腰痛症の方は運動により症状が悪化することがあります。かかりつけ医の先生とよく相談しましょう。